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(この原稿は、〈プログレスレポート第3号〉に掲載したものの再録です)  
  

2008年9月30日刊(徳間書店)

【第9回日本SF新人賞受賞作】

  こういうSFが好きだ。私・宮野にとってSFとはこのようなものだ。目次からして、大風呂敷である。「1 あらゆる物語の序章」に始まり「14 あらゆる物語の終章」に至り、そして、「1 〝あらゆる物語の序章〟」で終わる。内容も、目次に恥じない。  「宇宙細胞」は、地球上のあらゆる生物を呑み込んでいく単細胞生物だ。ヒロイン・舞華は、それが南極の氷の中より解き放たれるところから事件にかかわることになる。 

 地球上の最初の生物は「単細胞生物」だった。細胞分裂は、最初の生殖であると同時に、最初の死だった。死と生殖は同じ現象の別名だ。我々はそこから出発した。 出発といっても、そこを離れたわけではない。そこを起点として四方八方へ、いわば球状に、存在のバリエーションを生じさせていったのが生命の歴史だ。その意味では、むしろ、そこへの完全なる回帰こそが我々の真に求めるところかもしれない。

「宇宙細胞」の正体を巡って、ヒロイン・舞華は報道記者・目黒たちと思弁に満ちたやりとりを交わす。それは、刺激的かつスリリングだ。 目黒がきわめてヒロイックに「大事なのは雌だ。女だ」という言葉と「なぜか、満足しているような笑顔」を残してこの世を去った時に、舞華はわめく。

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